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最高裁判所第三小法廷 昭和43年(オ)867号 判決 1969年2月18日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人大塚重親、同大塚守穂の上告理由第一点について。

原審の確定した事実関係のもとにおいては、旭川地方法務局名寄支局の原審官吏が滞納処分による公売落札により訴外富永義吉のためにその旨の所有権移転登記をするに際し、同時に職権によつて本件処分禁止仮処分の記入登記を抹消したことについて、同登記官吏およびその上司である法務省民事局長には職務義務の懈怠なく、したがつて、故意または過失は認められない旨の原審の判断は正当であつて、原判決に所論の違法はない。してみれば、違憲をいう所論もその前提を欠くことに帰し、論旨は排斥を免れない。

同第二点について。

国は、公務員がその職務を行なうについて、故意または過失によつて違法に他人に損害を加えた場合でないかぎり、国家賠償法一条の規定による責任を負うものでないことは、同条の明定するところであるから、同旨に出た原判決の判断は正当であつて、所論の違法はない。論旨は独自の見解に立つて原判決の判断を非難するものにすぎず、採用するに足りない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 下村三郎 裁判官 田中二郎 裁判官 松本正雄 裁判官 飯村義美)

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